俺は生きたいと強く願った。
俺は奴を殺さなくてはならない。
正しい事をしたい欲求も間違った事をしたい欲求も無い。
俺は死にたくない。
俺は自分が助かる方法だけ精一杯考えた。
「もう一人」だって…きっとそうだ。


ただ一つ気になることがある。
それを俺は神主に尋ねた。
「何故俺は二人いるんですか?
何故俺はもう一人の俺に出会ったんですか?」
勿論神主の返答には期待などしていない。
ダメ元で聞いてみただけの事。
苦境に追い込まれた人間の必死な抵抗だ。
しかし意外にも理由があった。
神主いわくその理由は世界は複数存在し、本来お互いが別々の世界に生まれるはずだった。
しかし空間のわずかな乱れで同じ世界に同一人物が複数生まれてしまった。
ここまではさほど珍しくはないらしい。
だが俺の場合は出会ってしまったのだ。
会ってはならない「もう一人」に…。
本来同じ人間同士が会う事はない。
同じ人間同士がお互いの存在を認識する事は世界が不安定になる事を意味し、双方か片方が死ぬ事はその時点で確定する。
泣こうが喚こうが現状は変わらない。
俺は「もう一人」を殺すべく無い知恵を絞り続けた。
生きるために…。