俺は悪くない。
本当にそうだとは無論言い切れない。
だが俺も被害者だ。
運命に翻弄された哀れな被害者。
死を目の前にして運命に抗わない者がいるのだろうか。
俺は五十嵐の顔色を窺う。
無論五十嵐に顔色を窺っている事を悟られないようにだ。
すると五十嵐と目が合った。
気付かれたのだろうか。
俺が隠し事をしている事に…。
俺の不安を知ってか知らずか五十嵐はこんな事を言い出した。
「ここじゃ疲れるし近くの公園で色々話そ。
沢田君と話すの久しぶりだし。」
何のつもりだろうか。
録音機能を持つ機械を隠し持っているのだろうか。
しかし探りを入れたらそれこそ怪しい。
「もう一人」の件について話さなければ良い。
話さなければ……。
だがあまりにも向こうのペースに合わせるのも不自然。
俺は帰宅する事にした。
「悪い。俺用事あるから。」
「そっか…。
じゃあね。」
何とかやり過ごせた。
プライバシーにも気を付けておきたいと思った。