緋狭様は、動かずに見据えたままの櫂様を見て言った。



「坊は大きくなりすぎました。坊は死ななければなりませぬ。

死なねば――全てが水の泡」



櫂様は目をそらさず。



「ならばかつての師匠である私から、見事な死を与えましょう。もう誰もが恐れることのないように。まさか死の淵からは、反撃はおろか何1つ出来ますまい」



そして。



「金翅鳥(ガルーダ)!!!」



目に拡がる、赤の化身。


甲高い泣き声を響かせて、灼熱の炎の神鳥が翼を大きく拡げた。


この息もつけぬ程の、殺気にも似た覇気。


これは紅皇という…五皇のものだ。



改めて思う。


そして戦慄する。



緋狭様は――敵なのだと。



「櫂!!!」


玲様の声に、櫂様は頷いて…懐から黄色い紙を取り出した。



それは朱貴から渡された…八門の符呪。



それを目に止めて…


緋狭様は少しだけ笑みを作ったように思えた。