「さて…私の結界も、"無効化"によって解けてきたようだ。

お喋りはここまでだ」





途端――


空気が変わった。



緋狭様が拳を真上に突き出したかと思うと――


突如あたりが炎に包まれた。



「これより紅皇は、お前達の敵となる。


よって、お前達に知られたこの家は――


此処で燃やし尽す」



え!!?



そしてくるりと一回転すると、何処から取り出したのか…彼女は赤い外套を纏っていた。



一瞬にて変わる。



妖艶な神崎緋狭から――

毅然たる紅皇へと。



それは緋狭様の覚悟のようなもので。




「ひ、緋狭姉!!! 家も燃やすなよ、俺達の家だろ!!!?」



飛び出そうとした煌を、玲様が抑えた。


紅蓮の炎に包まれた緋狭様は、やはり何処までも神々しい…美しすぎる女性で。



「炎弓!!!」


緋狭様が左手の親指と小指をぴんと伸し弓の形を作り、炎に包まれた…無き右手を、それの矢のように四方の壁に放てば、そこから盛大な炎が生まれ、瞬く間に炎は拡がっていく。



灼熱の…炎の中、私は何かの叫びを聞いた。



それは、愛する神崎家を壊される者達の悲鳴か。

または、愛する神崎家を壊さないといけない者の悲鳴か。


それとも――


そうした者達を包み込んで激しく燃え盛る、神崎家そのものの…悲鳴なのか。



その時。


まるで炎のようにゆらりと、空間が揺らぎ――



「さあ。殺せ、緋狭」



突如、久涅が姿を現した。


櫂様と同じ顔を持つ、忌まわしい男!!!



「御意。元よりその覚悟の上」



そんな声に私達は思わず身構えれば、久涅の笑い声が響いた。