「では後、2分のみ」


そんな緋狭様の言葉に、


「嫌だよ、俺…緋狭姉と対立したくねえよ!!! 緋狭姉はいつだって俺達の味方だろう!!? 嘘でも何でも、緋狭姉に刀を向けたくねえ!!!」


それは我慢しきれぬといった、悲痛な声で。


「――馬鹿犬。いつまで私に甘えている。そろそろ自立をせぬか」


するとふるふると橙色の頭は横に振られて。


「俺、まだまだじゃんか!!! まだまだ緋狭姉に鍛えて貰わねえと…」





「いいことを教えてやろう、煌」




緋狭様は艶然と笑った。



「私は自らの守護石を、例えお前であろうと人には渡さない」


「え? でも壊された…あの増幅力がある腕環に確か…」


「あれも増幅力や遠隔感応能力などあるわけない。

ただの…鉛の錘だ」


「は、はあああ!!?

でもあれのおかげで、今まで俺…火の力を使えたじゃないか!!?」


「私の力がないものを身に付けて、私の力など出るわけないだろう、馬鹿犬めが。あれは全て――お前自身の力だ」


「え、ええええ!!?」


私は――妙に納得した。


非常に腹立たしいことだが、怠け放題の馬鹿蜜柑の潜在能力を思えば、今更どんな凄いことが出来ようが大した驚きにならない。


「"これがあればいつも以上の力が出る"…プラシボー効果。催眠術のようなものだ。まんまとかかりおって」


「そ、そんな…」


「…煌。

つまらんことに、心砕くな。

お前の弱点は、揺れすぎることだ」


その鋭い眼差しに、煌は何かを言いかけて、そして頷くだけに留めた。