その問いが迷いを生むのが判るから。


迷い惑うことが、破綻を誘導することを知っているから。



櫂様を…完璧に守りきるためには、その問いの答えのあり方に、早く片をつけねばならない。



緋狭様は――微笑んだ。



「否。元よりお前達など、暇潰しの玩具だった」



きっぱりと、斬って捨てられた。



櫂様は――



「情け容赦なく切り捨てて頂き、


ありがとうございます」



深く…頭を下げた。



「これで…迷いが無くなりました」



上げられた顔は、悲哀に満ち…同時に意志めいていて。


私達も頭を下げる。


冷酷な言葉の裏に、感じる師匠の愛情。



"強くあれ"



私達は、揺らいではならない。


それを伝える為に、今。


神崎緋狭として、現われたんだ。


対立する紅皇の姿ではなく。


それだけ…事態は切迫しているというのか。



緋狭様はくるりと私達に背中を向けた。



「――…覚えておけ」



そして私達の目の前で。


襦袢を大きく下げて…白い背中を露わにさせた。



「!!!」



私達は一同目を瞠(みは)る。



背中にあったのは――

真っ赤な…不可解な幾何学模様。


緋狭様の柔肌に深く痛々しく刻み込まれていて。



まるで…罪人に押されたような烙印。