「どうして、どうしてお姉ちゃん!!!」



私の代わりに泣き喚く芹霞さん。


緋狭様は困ったような表情を浮かべると、目で隣にいる櫂様に合図する。


櫂様は浅く頷くと、芹霞さんの首筋に手刀をうちつけた。


芹霞さんが目を閉じ…崩れ落ちる。


それを抱き留めながら、櫂様は緋狭様に目を合わせる。


「緋狭さん。その姿で俺達の前に現われたということは…紅皇としてではなく、緋狭さん個人として現われたと思っていいですね?」


緋狭様は、返事の代わりに笑うことで肯定した。


「後10分弱。警護団が動くまでの時間に――」


警護団の2時間という括りは、既に緋狭様の耳にも入っていたらしい。


「1つだけ、質問に答えてやる。


坊、何が聞きたい?」



聞きたいことは山にある。


何も判らない理不尽なことばかりで、何とかしたいのは本音だけれど。



だけど何より。


相対せざるをえない現実が、変えられない運命の一端だというのなら。


櫂様を守る為に私は――


逆境を乗り越え結束を固める為に私達は――




「緋狭さん。今でも…


俺達を愛してくれていますか?」