それは悪夢。


何処から何処までも悪夢。



「まだだよ、桜。


悪夢は…これからさ?」


鳶色の瞳には、真紅色の狂気。


玲様が常日頃恐れられていた、気狂いの光。



ああ、玲様を狂った世界に連れたのは私のせい。



玲様、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、



その時。



「桜。戻ってこい。これを飲むんだ!!!」



聞こえてはならない、いや…聞こえるはずのない声。


そして口に何かか入れられて。


「即効性があるものだ。α-BRの副作用の抑止効果もある」


途端、私の景色は薄らいで…




「桜!!?」



その声は――



「しっかりしろ、桜!!!?」



玲様?



「何を――飲んだんだ、桜!!?」



飲んだ?



「大事ない。すぐ意識は戻る」



その声は。



――桜。戻ってこい。これを飲むんだ!!!



ああ、私が聞いたあの声は、幻聴ではなく。




「ようやく…来たか」



緋狭様。



私を助けてくれたのは――


やはり緋狭様だったんだ。