第1話 想い

キーンコーンカーンコーン
学校終わりのチャイムが鳴る。
私は親友の瑠樺に手を振って、急いで教室を出て下駄箱まで行く。

すると、いつも通り下駄箱にすがって私を待っている蓮がいる。
「蓮!」
私が呼ぶと、イヤホンを取って、
「遅い」
って言った。
けど、顔は怒ってない。
優しく微笑んでる。

「ゴメン、ゴメン」
私が笑って謝ると、
「反省してねぇだろ」
って言って、自転車の鍵を出した。

私達はいつも一緒に帰ってる。

けど、付き合ってる訳じゃない。

私達はただ幼なじみで、家が隣だから。

私は小さい頃から蓮の事が好き。
でも、告白しても振られるのは目に見えてるから、告白はしない。
告白して振られたけど、告る前より仲良くなった。なんて人もいるけど、私達はたぶんギクシャクしちゃうだろうから。
それが嫌で、そうなる事が怖くて、告白なんて出来ない。
ギクシャクしちゃう位なら、この想いは胸の中にしまっておいて、ずっと仲の良い友達のままで良い、そう思ってた。

だから、言いそうになっても、言わないように自分で制御する。

そんな事を思っていると蓮が不思議そうにコッチを見ていた。
私はハッとして蓮の自転車まで小走りで行こうとした。
するとそれに気付いた蓮が、広げた手を私に向けてストップ合図をした。
それに気付いた私が止まると、蓮が自転車から降りて近寄って来た。

「お前ドジなんだから、走るなよ。絶対コケるから。」
って言って私の鞄を持ってくれた。
その優しさで私の胸はキュンと高鳴った。

でも、さっき言われた事をよくよく思い出すと、【ドジ】って言われたよね?
それにイラッとして、(コケないもん)と思って走った。

すると、蓮の言う通り石に躓いて(つまずいて)・・・コケた・・・
「痛い・・・(泣)」
見ると、私の膝から血が出ていた。
それに冬だから尚更痛い。

ハンカチ何処にあるんだろう?
あれ?ポッケに無い!?
いつも入れてるのに!
ティッシュは!?
やっぱり無い!
もしかして、朝忘れちゃったのかなぁ?

1人で慌てていると、蓮が来て、
「だから言っただろ。んっ」
と言って、ハンカチを貸してくれた。

無意識に『好き』って言葉が出そうになった。
だけど、言う前に気付いて、止めた。
振られるって分ってるのに、蓮と一緒にいると、無意識に『好き』って言いそうになる。