「だっ…大丈夫です」
私が答えると彼は何も言わずに、拾うのを手伝ってくれた。
「ありがとう」
そう言って私も拾い始める。
彼を背にして、自分の後ろに散らばった物を拾っていた。
もう少しで終わる。
そう思っていた時だった。
「あっ…」
彼の少し低い声に反応して、私は振り向いた。
彼の視線は床に落ちている一枚の紙に注がれている。
それはなんと!
私の実力考査史上最低点数13点の数学のテストだった。
私はそれを慌てて拾い、鞄の中に押し込んだ。
「…ごめん」
別に彼は悪くないのに、そうやって謝られると、なんだか急に恥ずかしくなってくる。
「ありがとうございましたっ!」
私は立ち上がり、彼にその言葉を残して、逃げるようにその場を走り出した。
折角のチャンスだったのに…。
オマケにバスの時間にまで遅れちゃって、完全に落ち込んでしまった。
次のバスまであと一時間待ち。
ベンチに座って、胸ポケットから携帯を取り出す。
帰りが遅くなることを母親にメールして、再び携帯をしまった。