返事がないってことは聞こえてないんだろうなぁ…。


内心少し安心してる。

だって、先生と生徒だし、先生が困るし、何より今までみたいに接してもらえなくなることが怖い。



先生に連れてこられたのは、今は使われていない教室だった。



「入って」



そう言われて私が先に中に入った。


後から教室に入った先生が戸を閉める。



先生はそのまま後ろの戸に凭れ掛かった。



「あのさ…さっきのって、手のこと?」



「え…さっきの…?」



質問の意味が理解できなくて私は聞き返した。



「ここに来る途中に言ってたこと」



そう聞かれてやっと理解した。



「聞こえてたんですか…?」



顔が熱くなってくのがわかる。


先生はまたため息を吐いた。



「あんだけ近けりゃ聞こえるって。で、どうなの?」



さっきとは違う先生の真剣な顔にドキッとした。



「…恋愛感情っていうのが、よく、わかんないんです…」



どう説明したらいいかわからないけど、混乱してる頭を必死に回転させて、言葉を捜しながら、話し始めた。