「…あと?」
私が聞くと、瀧口ちゃんはニヤリとした。
「胸キュンだよ、胸キュン!」
「む…胸キュン?」
「そう。それが一番大切かな」
胸キュンが一番大事なの?
「胸キュンって、なに?」
「は?!」
私の質問に、四人がまた同時に反応した。
見るからに呆れてるって感じで、ため息も同じタイミング。
「みんなして…ヒドイ…!」
「だって、那智!今時胸キュン知らないのなんてアンタくらいだよ?!いい?胸キュンて言うのは、相手の言動で胸が締め付けられるように苦しくなったりする事だよ!」
楓が身振り手振りで“胸キュン”の説明をしてくれた。
それはもう凄い勢いで。
「そこまで苦しくなると胸キュンじゃなくなっちゃうけどね」
小浪ちゃんが鋭く突っ込む。
「う…!小浪やるな…」
私は悔しがる楓を見て、苦笑いするしかなかった。
皆で喋ってるのは楽しい。
さっき5限が始まったばかりと思ったら、もう6限が終る時間だった。
「あっという間だったねぇ」
瀧口ちゃんが言って、みんなして笑いながら中に戻った。