「なに?」


「いや、なんで彼女さん追いかけないのかなって…。」



私をチラッと見ると貴方は前を見た。
何も言わない貴方を見ながら私は話続けた。



「貴方は彼女さんを大事にしてるから、追いかけるんだと思ってたのに…。」

「………。」


「追いかけないなんてビックリです。何が原因で彼女が泣いてたのかは分からないけど、めんどくさいなんて言うと思わなかった。」


「………。」



ずっと黙って数字を見ている貴方に嫌気がさして壁に体を預けた。
何も話さないからシーンっとなる。
ただエレベーターが動いてる音がするだけ。
あと、もう少しで1階に着くという頃に貴方が口を開いた。



「……あいつが泣いたのは俺が別れを告げたからだ。」


「え?」


「……俺に好きな奴ができたからだ。屋上にいるのはそいつを見るためだ。見てるだけじゃ足りなくて…。触れたいから…。だから別れを告げた。」


「え…。ちょっ!!」



意味がわからなくて再度聞こうとしたらエレベーターが1階についてドアが開いた。
貴方がドアから出ていってしまったから聞くことができなかった。



「ちょっと待って!!それで別れたわけ!?あんな可愛い子をフッたの!?」


「あいつ…可愛いのか?」


急に足を止めた貴方は横に並んだ私の顔を覗き込みながら不思議そうな顔をしていた。



「…は?」


「あいつって可愛いのか?」


「じゃあ、聞きますけど。どっからどう見たら可愛くないんですか?私には可愛く見えますよ?」


「そうか?ただウザくてめんどくせぇ女だけどな。」


その言葉にカチンときた私は貴方の目の前に仁王立ちした。