「えぇ…。妻が待ってますので、私は行かせてもらいます。


色々とご迷惑をおかけしました。
最後の最期まですみませんが宜しくお願い致します。


それでは、失礼します。」


そう言って千夏の部屋から出た。

俺は、清々した顔をして空を見上げた。

外は桜の花びらがヒラヒラと舞い落ちていた。


それを見た俺は窓を開けて手を伸ばし桜の花びらを二枚取った。

花びらを見て微笑み、足早に桜の部屋に向かった。



「もうすぐだ。」



もうすぐ桜に会えると思うと苦しさなんて感じない。



「さ…くら。ゲホ…ゲホゴボッ!!」



口から真っ赤な液体が出た。
本当にもうすぐなんだ。
俺は静かに桜の隣に入って横になり桜を優しく抱きしめた。


よく、自殺した者はどこにも行けなくなりそこに留まり続けるという話を聞くが俺は何としてでも桜の待つ場所に行く。行ってやる!!



「桜…。」



愛しい妻に口づけをして目を閉じた。



『愛してる。結婚しような?』



あのとき桜に結婚指輪を桜の左の薬指にはめながら囁いた。



『っ…!!私も…愛してる。』



桜の返事が無性に嬉しかった。

その桜に今、会える。



「桜…。」



ぎゅっともう1度力を込めて抱きしめたと同時に意識がなくなった。