暗闇の中、私は一人で座っていた。
ただぼんやりと龍夜のことを想って泣いていた。


「…………ら。」


「…………?」



誰かが私を呼んでいる。
だけど、その声はすぐに消えてしまう。
そんなことがずっと続いた。

今、何時かもわからない。
自分が何をしているのかもわからない。

ただ唯一分かるのは龍夜を求めてる心があることだけ…。



また龍夜を想って泣いていたらあの声がはっきりと聞こえた。



「桜…。」


「龍夜?」



回りを見渡すと1ヶ所だけ光が当たっていることがわかった。

そこには、私の名前と同じ桜が満開の木と、求めていた愛しい龍夜の姿。


「龍夜!!」


「桜…。やっと会えた。」

「龍夜…。会いたかったよ…。」



そこにいることを確かめるようにぎゅっと強く抱きしめた。

だけど、龍夜の体が薄く透けていることに気づいた。



「龍夜…?」


「あぁ。俺の体薄く透けてるな?」


「消えちゃうの?」


「違う。違うよ?桜。俺が消えるんじゃなくて桜…桜が消えちゃうんだ。」


「え…?」



龍夜が言ってる意味が分からなくて首を傾げたら龍夜は優しく笑って頭を撫でた。



「桜は階段から落ちて意識不明。今日で4日経ってる。

だけど、桜…。
今、お前はもう少しで死んでしまうんだ…。

脳出血。
どうしようもないらしい…。
助からないらしい…。

だから、せめて苦しまないようにって酸素マスクを外して桜の死を選んだ。
勝手なことしてごめん……。」



龍夜は私が死ぬこと。
その理由。
全てを話してくれた。
だけど…それってさ?龍夜。



「龍夜は私のこと嫌いになっちゃった?」