「人間ってさあ、本当に
悲しいときは涙が出ないんだって」
すすり泣く私の横で
そう言い放ったのはクラスメイトの由衣。
由衣とは特別仲が良いわけではない。
むしろ、話したのは今日が初めてかも。
「それじゃあまるで、
私が今悲しくないみたいじゃん」
腫れ上がった目で由衣を見て
苦笑混じりにそう言うと、由衣は
さっき図書館で借りてきたのであろう本を
鞄に入れながら 「そうとは言ってないけど」
と微かに笑みを浮かべて教室を出て行った。
夏の終わりを告げる蝉たちが、
うるさいぐらいに私の耳に響く。
夏の夕暮れが、一層私を孤独にする。