「ん……、あれ…ここは…」


明希が目を覚ましたのは、見知らぬ森の中だった。


「何なのここ…?真っ暗…」


あたり一面、木々が鬱蒼と生えている。
太陽の光が全く入ってこない。

「…とにかく森から出なきゃ」

明希は、道なき道を歩いて行った。


どこまで行っても景色は変わらない。


次第に不安が募っていく。


(ここはどこ…?出口は…どこ…?)


不安に駆られ、明希は走り出す。

何かから逃げるように、ただひたすら走り続けた。


―…助けて…っ!誰かっ!助けてよ…!





「……っ…はぁ…はぁっ…」


ひたすら走り続け、息が上がってきた。

「はぁ…は…っ、あれは…っ!」

前に光が見える。


「出口だ…。助かった…!」


最後の力を振り絞り、前に前にと駆け出した。


少しずつ…少しずつ光が近づいてくる。




フワッ…と風が吹いた。


そして、辺りがパッと明るくなる。


森から出れたようだ。

光と風が明希を包む。


「…良かった……」



余程疲れたのか、明希はそのまま倒れ込んでしまった。


意識が朦朧とする。

途切れそうな意識の中、ふと、頭の隅に待ち合わせをしていた親友の顔が浮かんだ。


(…美由ちゃん…梨子ちゃ…ん…)


そのまま明希の意識は途切れた。





「もうっ!明希ったら遅い!」

美由はさっと腕時計を見た。

10時5分。

待ち合わせの時間から5分たった。


「美由ちゃん、まだ5分しかたってないよ。明希ならもう少しで来るって」

優しく諭す梨子を、下から見上げ

「梨子は優しすぎだよ…。…全く、明希ったらぁ…」

美由はコートの前をギュッと押さえた。
風が強く吹いていてかなり寒い。


「……あと5分たって来なかったら肉まん奢ってもらう!」

「ふふっ、そうだね。いっぱい買ってもらおっか」


二人は顔を見合わせて笑った。
またヒュッと風が吹く。


「ふぅ~…風が強い…」

「…雪が降りそうなかんじだね」

美由は空を見上げた。
少し雲がかかっていて、薄暗い。

遠くでクリスマスのイルミネーションがキラキラと光っている。


「明希…早く来ないかなぁ…」

首を縮めて顔をマフラーに埋めた。