「ただいま、父さん」
「お帰りレクシス。隣にいる子はお友達かい?」
レクシスの父親が部屋の向こうから出てきた。
車椅子に乗っている。
「(足、怪我したのかな…?)」
明希は一歩前に出た。
「はじめまして、日野明希です。明希って呼んでください」
ペコッと頭を下げる。
その様子を見て、レクシスの父はハハハと笑った。
「いやぁ、礼儀正しい子だね。私はレクシスの父だよ。よろしくね、明希」
「父さん、しばらく明希をここにいてもらってもいいかな?」
「全然構わないよ。この家は好きに使ってくれ。大歓迎だよ」
「っ!ありがとうございます!!」
レクシスの父は明希の肩を軽く叩いて、クルリと椅子の向きを変えた。
向いた方向から、美味しそうな匂いがしてくる。
「お腹が空いただろう。レクシス、明希、手伝ってくれるかい?」
「はいっ!」
二人は顔を見合わせ、大きく頷いた。
三人は食堂に入り、夕食を食べた。
父の過去の話や、幼い頃のレクシスの話。
部活動の事など、たくさん話した。
あっという間に時間は過ぎ、夕食も食べ終わる。
明希達は後片付けをした。
父が食器を洗い、レクシスが拭き、明希が棚に片付ける。
最後の皿を仕舞い、棚を閉めた。
明希は捲っていた袖を下ろす。
「二人ともお疲れ様。今日は早く湯に浸かって寝なさい。もう遅い時間だ」
時計を見ると、針は10時46分を指していた。
二人は大人しく風呂場へと向かう。
さすが宿屋ということもあって、湯船は大きかった。
出た後は、ふかふかのベッド。
明希がベッドに飛び込む。
その後二人は12時頃まで話を続けた。
当然、瞼が重くなっていく。
「…それじゃ、明日はここの村の近くを案内してね…」
「うん。また明日ね」
そのまま二人は、眠りについた。