右手を見た。
少し赤くなっているが特に目立った変化はない。
――ギュッ…
レクシス明希の手をとった。
「…どうしたの?」
「…ごめんね明希。こっちの世界にきたばかりなのに危ない目に合わせて……」
レクシスの目には涙がたまっていた。
「―…レクシス…」
「ごめんなさい…」
明希はポケットからハンカチを出した。
そして、レクシスの涙をそっと拭う。
「大丈夫、レクシスは何も悪くないよ。私も生きてるし、レクシスも生きてるんだから」
ほほ笑む明希に、レクシスもつられるように笑った。
「…ありがとう」
「笑顔が一番。それでいいんだよ」
二人はまた微笑みあった。
「さてと、しばらくは戻れそうもないし、どうしよっかな」
思いっきり伸びをする。
長いこと寝ていたようで、骨がパキパキと鳴った。
起き上がって服を整えると、レクシスはパッと明るい表情になった。
「そうだ!私の家に来ない?」
「え、いいの?」
「いいよ。それに、前に言ったけど家が宿屋だし」
部屋も結構多いから、とレクシスが付け足す。
明希も明るい顔になった。
「うん、行くっ。よろしくお願いします!」
話が決めればすぐ行動。
二人はゼペル村に向かった。
また、少しずつ美しい景色が近付いてくる。
「あっ…」
村に入ると、レクシスの足が止まった。
「どうかした?」
「…。」
一点を見つめている。
「ん…?」
見ている方向を見ると、そこには白いローブを着た青年がいた。
金色の髪に優しそうな顔立ち。
背も高く、なかなかの好青年だ。
「…ははぁん、なるほどねぇ」
チラッと横を見ると、レクシスの顔が若干赤みを帯びている。
「恋だねぇ~」
「う、うるさい!」