キメラはもう目の前だ。

「明希っ!」

レクシスが叫ぶ。
しかし、明希は避けようとはしなかった。

「手ぇ出すんじゃないよっ!」

明希はキメラの鼻先目掛けて蹴りをかました。

ギャウッ!

悲痛な声を出すキメラ。

「今の内に逃げよう!」

「う、うんっ!」

二人は風を切って走り出す。


――このまま逃げ切れれば。

そう思ったのが甘かった。

すぐに回復したキメラは、物凄いスピードで二人を追い掛けてくる。

「は、速い…っ」

「ど、どうしようっ?!」


もうキメラはすぐ後ろにいる。
明希はレクシスを庇うように横に倒れ込んだ。
そのすぐ横をキメラが通り過ぎていく。

「行こうレクシ…」

踏み出した足が沈んだのを感じた。
グンッと前のめりになるが、足だけは動かない。

まさか…

「明希、足が…っ!」

明希の足は小さな溝にはまっていた。
キメラは方向転換し、こちらに向かって来ている。

これは…まずい。

「レクシス逃げて!」


ここで二人で残ってしまったら、どちらも助からない。

「で、でも…っ」

「いいからっ!早く!!」

だが、もう遅かった。
キメラの姿が目の前にある。

ここでは死ねない…生きたい、助けたい…っ!

明希は右手を握り締めた。
体が熱くなっていくのを感じる。


「…っ!!くらえぇーーーっ!」

明希は右パンチをくらわせようとした、が…

――バシューーンッ!

右手から、凄まじい輝きを放つ光が一直線にキメラへと向かった。