“気分の良い朝だ”


と、天井を見ながら明希は思った。

いつもと変わらない朝だが、小鳥の声も窓から差し込む太陽の光りも、全てが輝いているように見えた。


…だって


「今日は私の誕生日だもん♪」

ガバッと飛び起きて、勢い良く階段を降りた。

そして軽やかに階段を下りていき、リビングへと続くドアを開ける。


「おはよう!お父さん、お母さんっ」

飛びっきりの笑顔で言うと、台所で朝御飯を作っている母がこちらを向いた。

「おはよう明希」

「…おはよう」

新聞を読んでいる父も素っ気いが返事をした。
そして新聞を次のページへ捲る。


ふと、母が明希の顔を見た。

「いいの明希?まだそんな格好で」

「…えっ?」


誕生日の事で頭が一杯で、何かを忘れているみたいだ。

とにかく早く思い出そうと、明希は記憶を巡らせた。

…………。


「…あぁーーーっ!!いっけない!友達との約束忘れてた!!」


すぐさま階段を駆け上がり、部屋のドアをバタンと閉めた。


数十秒後、着替えを終えた明希がドアを壊す勢いで出てくる。

―…トンッ、トンッ、タッ

15段もある階段を3歩で降り、リビングで適当にパンを口にくわえ、玄関に走っていく。


現在9時55分、約束の時間は10時。

ここから待ち合わせ場所まで歩いて20分、走って10分だ。

「ひほふ!(遅刻っ!)」

「ちょっと明希」

「ふぁい?」


「これ、つけていきなさい」