「…………」


その障害物は自分の頭を直撃した物体をご丁寧にもゴミ箱から拾い上げ、決して上機嫌とは言えない顔で私を涼しい瞳で見つめてくる。

その障害物とは、私のクラスの副担任その人だった。


「……今のは?」


低く問われ、血の気が引く思いがする。

自己責任だ。

自己責任なんだけど。

…やっぱり今日は最悪の日だ。


「す…すみません」


青ざめながら謝罪すると、先生は手のものを見つめる。


「…これは?」


う。

まずい。

私はわたわたしながら言い訳を探すが、きっと紙質でテストの答案用紙だとすでにばれている。


「………」


先生は無言でそれを広げ眉をしかめた。


「……これは?」


明らかに、この点数は?…と聞かれている。


「す…すみません」


もう、これ以外に私の発言は許されていない気がしてきた。

先生はしばらく私を見つめていたけれど、ひとつ小さく息を吐いてこっちに歩いてきた。

そして私の近くまで来て、答案用紙を返してくる。

無言で受け取ると、


「こういう扱いをするから向学できない。どこをどう間違ったか、なぜ間違ったか振り返りをすることで知識は自分のものになるものだ」


と、堅苦しいお説教が返ってきた。

耳が痛い。

担任は気さくでフレンドリーなのに、この副担任は生真面目すぎてよりつきにくい。


『センセ、おはようです』


などと言おうものなら


『先生、おはようございます、だ。日本語がおかしい』


と返される。

そんな教師だ。

整いすぎた容姿が余計に冷たい印象を与えてくる。

正直、ちょっと苦手だ。


先生は私に座れ、と動作で促した。

うわ。
説教ですか。

そうガッカリすると手を出された。


「?」


不思議に思って見つめると真剣な目に見つめ返され、どきっとする。