「だって、白井さん社長の子息?とかいう噂あるじゃないですか。結婚できたらもしかして社長夫人?ですよ?それにイケメンだしどうしてもお近づきになりたかったんですゴメンナサイ」


…蹴飛ばしたい。


こんな子を信じたばかりか全力で庇護した自分を力の限り蹴飛ばしたい。

ぐらぐらしながら私は彼女を見る。


「…で、そのときからの付き合いなのね?」

「はい…」


これは、親睦会終了時そのままホテルに行ったな。

多分このプロファイルで間違いないと思う。

その時点で軽いと気づこうよ。

しかし今更言っても仕方がない。


「…生理、遅れてるだけってことはないの?」


最後の望みでそう聞く。

彼女はまたうるうるしながら首を横に振った。


「検査薬、プラスでした…」


ああもう。

ぐだぐだだよ。

頭を抱えてしばらく頭痛と格闘する。

誰が悪いといえば、勿論彼女が悪い。

そして白井さんも悪い。

でも、お腹に宿った子供は悪くない。

絶対に悪くない。

そこだけは間違えてはいけない。

そして脇役の私は生みたいのか違うのか聞くべきじゃないし、生むべきとか堕ろすべきとかを言うべきじゃない。

ただ一言、当然のアドバイスだけをする。


「話をするべきだと思う。メールじゃなくて」


脇役は無力だ。

でも主役達の背中を押すくらいのことはできる。

それしかできないけれど。

でもできるなら、

かなうなら、


幸せになって欲しいと思うんだ。