「先月の10日に親睦会あったじゃないですか…」

「ああ、せんげ…」


止まる。


「…ちょっと待って先月の10日、貴女親睦会行ったの?」


彼女はしまった、という顔になる。


「貴女あの日、用事があるって…」

「ごめんなさい…」


本日二度目のめまいに額を押さえる。

先月の10日、彼女は業務でミスをして残業を上から命令された。

しかしどうしても用事があるというので

私が、親睦会を諦めて代わりに残業をしたのだ。

別に親睦会がどうというわけではない。

実はあの日、ある男と少々言い合いになったのだ。

久保。

白井さんと同じくキャリアでイケメンだが愛想がなく陰鬱で正論しか言わない曲者だ。

勿論女子の人気はマイナスに大きい。

その久保が、代理残業をしている私に近寄ってきていちゃもんをつけてきた。


「なぜ君が残る」


朴訥な言いぐさはイヤミの棘をこれでもかとはらんでいた。


「用事があると聞きましたので」

「なんの用事だ」

「知りません」

「なぜ知らない」

「プライベートなことですから。困ったときはお互い様です」


久保は呆れたようにため息をついた。


「これだから大抵の女は使えない」


カチンときた。


「自分のミスを人に任せて帰宅か。社会人が聞いて呆れる。ろくに仕事もこなせないくせに終業時刻だけには忠実なんだな。どうせふらふらして男にかまけているに決まっている」

「彼女はそんな子じゃありません」


にらみつける。

「ちゃんと仕事をしていますし真面目です。彼女を批判できるほであなたが彼女を知っているとは思えません。よく知りもしないで失礼だとは思いませんか」


久保は少し意外そうな顔をした。


「攻撃ならともかく庇うとは意外だな。女は陰口をたたくものだと思ったが」


もっとカチンときた。

ので、無視した。

馬鹿じゃないのかこの人。

馬鹿じゃないのかこの人。

いくらなんでもひどすぎる。

男だろうが女だろうが仕事に関して責任感は同じだ。

それくらい誰にだってある常識だ。

私は非常に気分が悪かった。


のに。


まさか久保の言う通りだったなんて。