車は高速を使い、西の方へと向かった。マリアはあまり車で移動したことがなく、はじめは少し緊張して外を眺めていたが、やがて睡魔に襲われ、知らない間に隣の徳二郎の方にもたれて眠ってしまっていた。次に目覚めたのは、肩を揺すられ耳元で聞こえる徳二郎の声だった。
「マリア・・マリア、起きて」
 ハッっと体を揺らし起きたマリアに、徳二郎は少し苦笑してそっと頬にキスをした。起きたての不意打ちにマリアは顔を赤らめ、外に視線を移す。すると、窓の外には一面に広がる海と地平線が広がっていた。車から降りて徳二郎がマリアの席のドアを開ける。マリアはゆっくりとのばした徳二郎の手を取り、車から降りた。