二十分ほど待ったあと、徳二郎が原田と一緒にロビーへ出てくる。二人の姿を認め、マリアが立ち上がると、原田は立ち止まり、二、三、徳二郎に言葉を掛け、徳次郎の肩を軽く叩き送り出した。原田はマリアにもポケットに入れていた片方の手を挙げ挨拶すると、きびすを返し元来た方へと去っていった。
「マリア、ごめん。待たせちゃったね。行こう」
 徳二郎はマリアの手を取り、ぐいぐいと入り口へと向かう。原田に一言礼が言いたくて後ろ髪引かれたが、原田の姿はなく、徳二郎に言われるまま出口へと出た。