翌日、二人は愛しながら夜明けを迎える。裸で窓を開け、ゆっくりと日が昇るのを見つめ寄り添った。山の向こうの空が、濃い青から薄い青へと変わってゆく。やがて白い柔らかな太陽が顔を出し、山の神秘的なシルエットがだんだんと露わになっていく。その姿の美しさ、神々しさを、二人の思い出として永遠に胸に焼きつけた。幸せを感じ、神に感謝する気持ちが自然と溢れてくる。
「ねぇ、徳二郎」後ろでマリアの体を包み込んでいる徳二郎に、首だけを向け名前を呼んだ。なに?と少しだけ首を傾げ答える徳二郎を愛しく思い、まわされた腕の手を取り向き合った。
「ね、徳二郎はどこか行きたい?ほら、前に言ったでしょ。『なにか違うことをしたかった』って。それでうちの店に来たんだよね。今度はふたりでどっか行こ。今日これからでもいいよ。しばらく仕事は休み取ったから」
 マリアの申し込みに、徳二郎は少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに笑顔になり、「そうだね」と、答えた。
 そうしてまた二人は、少し高くなった太陽の柔らかな日差しを浴び、抱き合った。抱きしめる徳二郎の腕が、きゅっうとマリアの体を締め付け、マリアは愛に包まれた。