その日も支度が終わり、店を出たのは時計の針が十二時を過ぎた頃だった。いつものように徳二郎が待つ街灯の角へ急いだ。チカチカ光る明かりの下で、いつものように人影が映る。
「ごめんね。今日もまた遅く……」
 マリアは街角で待っている徳二郎に話しかけたはずだった。だがそれは徳二郎ではなく、別の男だった。
「あんた……誰?」
 マリアは間違えたことも謝らずに、相手に腹を立てた。なぜそこにいるのか。その場所は徳二郎の場所だ。見ず知らずの相手なのに、マリアは睨みつけた。