のどの渇きも忘れ、しばらく徳二郎の顔を眺めていると、長いまつげが動いた。見つめているマリアの気づいて、何度か目を瞬く。マリアが徳二郎の顔に触れると、その手をそっと取り、キスをした。
「おはよう」
 マリアが言う。徳二郎はにっこりと微笑むと「マリア、好き」と子供のように言った。すると下の方から、‘ぐぅ~’‘くぅ~’と小さな音が二つ鳴る。お互い目を見合わせて、クスクスと笑った。
「そういえば何も食べてなかったね。何か作るから待ってて」マリアは徳二郎の額にキスをして、ベッドを出た。
 いつも部屋着にしているユニクロの上下の服を着て、冷蔵庫を開け何を作ろうか考えていると、後ろから毛布を着たまま徳二郎がやってきた。昨日の服は脱いだままでまだ湿っている。
「ごめん、徳二郎。今着替え出すね」
 確か大きめのTシャツとスウェットの下があったはずだと、タンスの中を探した。見つけて徳二郎に渡し着替えさせると、あまり大柄でない彼にはちょっと大きいぐらいだった。よく見れば168センチのマリアより少し高いぐらいだ。そうか、私が大きすぎるのだと、なにやら納得してしまった。