バスルームでも二人はシャワーを浴びながら愛し合った。何でこんなにもお互いを求めるのかわからない。だが体をかさねる度に、それは必然のように思えた。体と心と全てで徳二郎を求める。徳二郎もまた同じようにマリアを求め、愛する。マリアは、運命の人に出逢ったのだと、喜びに心あふれた。
 二人は朝まで幾度も愛し合った。日曜日で店が休みだったのが救いだ。そうでなければ足も腰もガタガタでまともに踊れなかっただろう。昼間には二人とも疲れはてて深い眠りについた。裸で身を寄せ合い、安らぎの中で夢を見る。この感じは……そうだ、遠い記憶。まるで母のおなかの中にいる胎児のような、ふわふわと心地良い世界。今思えば、そのときが一番幸せだったのではないか。記憶の中での母はいつも苛立ち、売りの仕事の障害だと言ってはマリアを邪魔者扱いした。外の世界で今まで幸せを感じたことは、無かった。