「まぁ良い。さて、呉羽」


名前を呼ばれ、落ち込んで俯きかけた顔を上げた時、ズイと昴さんが私に顔を近づけた。


「……っ」


暗くても吐息で分かるその距離に、私は頭がくらくらしてしまう。


そのまま耳元で、昴さんが囁いた。


「嘘は求めてないからな?」


こくこくと頷くと、昴さんは微笑んで口を開いた。


「――お前が最近俺を避けるのは、七瀬が妙に俺に懐いている事と関係あるか?」

……関係ない?

それは多分、大有りだ。


私はぐっと口を紡ぐ。

「………」


昴さんはその距離のまま、ひたすら私の出方を窺っているようだった。

が、しばらくたって私から離れる。