〜植島〜
俺はメニューで顔を隠しながら飛我を盗み見した。
「・・・」
よし、まずまずはバレてないみたいだ。
これなら絶対、俺が『桜』だなんて気づかれないな。
俺は今、『植島一』として飛我が出ている合コンにいる。
「(なに食べようかな・・・)」
しっかし、さすが俺!
植島から借りた帽子をこんなに上手く着こなしちゃうなんて!
天才だね!!
あ、そうそう。
実は本物の植島は俺が昔通ってた学校の同級生。
アイツには、今日の合コンは女子達の都合で流れたって言っておいた。
完璧。
凄いね、自分で自分を褒めたたえたいよ。
「・・・」
それにしても・・・
「燕ちゃん燕ちゃん!」
「あ、はい?」
「そろそろなにか頼もうかと思うんだけど、燕ちゃん何食べたい?」
「じゃー・・・オムライスでっ」
飛我がちょっと笑顔で話してる。
しかも初対面の男と!
ちょームカつく!
しかもなに!?
この真治って奴、あからさまに下心丸出しっ!?
あんなん『俺、燕ちゃんお持ち帰りしちゃおっかな〜』って言ってるようなもんだろうっ!!
許せんっ!!(でも非力)
「植島さんは何頼みますっ?」
「っえ」
ヤバ、今、素の声出しちゃったかも。
まさかこのタイミングで話しかけてくるなんて。
俺は気を取り直して、植島になりきった。
「・・・燕さんは」
「あ、私はオムライスにしました!」
・・・可愛いなぁ。
じゃ、じゃなくてッ!
「・・・かつカレー」