ピピッ…ピピッ…

「もぅ…朝…?」

部屋に響く目覚まし時計の音。

適当に服を選んで荷物を持って、階段を降りた。

「おはよ…胡桃、座って」

「…はい。」

「悪いんだけど、胡桃…アナタにお金を渡すから先に東京に行って?」

「は…?何で私だけ!?」

「色々な都合よ…とりあえず、アパートはもう取ったから。」

「は…はい…。」
何で…?

ママは私が心配じゃないの?

荷物をタクシーに積みながらそう思った。

「出してください…」

「はい」

タクシーがゆっくりと動き出す。
私は運転手の目も気にせず泣いていた。

「お客さん…着きましたが…」

「…はい」

出発ロビーに着くと、みんなが待っていた。

「「「胡桃様ー!!」」」
「胡桃!忘れないでよね!私達が、いることを…」

「ミホ……みんな…」

「帰ってくるときは土産忘れんなよー(笑)?」

「わかってるよーだ!じゃあ…」

「うん…また、ね!」

「バイバイ!」

私は新幹線に乗ってみんなと別れた。
みんな…バイバイ…

〜♪♪

別れたばかりなのに連絡をしてくるみんな。

[私達のこと、忘れないでよ?浮気したら怒るからね(笑) ミホ]

[あ、土産は高級なものでー 宗]

[ファンクラブはまだまだ続きますから! ファンクラブ一同]

「ぷッ…みんな…心配性だな〜」

みんな…
こういう所が大好き……


<次は、東京〜東京〜…>

「あっ…降りなきゃ…」
バッグを片手に新幹線を降りた。

「ここが…東京か…」

私は指定されたアパートに行き、部屋に入った。

「ここが新居…。」
真新しいシンプルの壁には似合わないずっと使っていた古い机と椅子。

「ベッドは新しいんだ…」
ベッドは前の方が寝心地が良かったのに…。 でも私に文句は言えない。

ギシギシと軋むベッドにダイブして私は泣いた。

出来ることなら…ずっとみんなといたかったんだ…。

「ヒック…みんなぁぁ〜…」
溜めていた気持ちを全て新しいベッドに詰め込んだ。

別れたくなんかなかった。
一緒にいたかった。

携帯画面のプリクラの中にいる私はメイクをして、とても笑っていた。
こんな笑顔はここでは出せない…。
そう思った。

私はその日は何も食べずに布団に踞った。