「あっ、あの……。

 すいません」



そんな二人に謝るしか出来なくて。


「君は悪くない。

 助けたのは俺だ。

 そこに辿りついて俺が見つけたのも
 何かあったんだろう」



男らしい顔をしたその人は、
真っ直ぐに私を捉える。



「あぁ、晋作。
 これを返しておかないと……」


義助さんがそう言って立ち上がると、
手に何かを持ってゆっくりと近づいてきた。


「そうだな。

 君を助けたときに、
 君が身に着けていたものと
 握りしめていたものだ」



そうやって、目の前に広げられたものは
全て記憶にないもので。



見たこともない形をした布。



今、私が着せてもらっている
衣服とは違ってる。


その隣にある袋の中に入ったものも
全て……身に覚えのないものばかりだった。






「思い出せないか?」





手に取って無言のまま固まる私に
晋作さんが声をかける。



「晋作、
 焦らせてはいけないよ」



義助さんはそうやって言ってくれたけど、

何……。






どうして?






私の物だって教えてくれたそれを
どんなに見つめても、見慣れないものばかりで
触れても何も思い出せない。




考えようとすると、
靄がかかってひどい頭痛が押し寄せるだけ。





でも思い出さなきゃ。





私……誰なの?





何で……ここにいるの?





「おいっ。
 無理するな」

「そうだよ。
 無理しなくていいから」




二人はそう言ってパニックになりそうな
私の背中をさすってくれる。