「…痛いの痛いの、とんでいけ。奏多はえらい子、男は泣かない」 こぶを撫でながら、そう呟く。 ふと蘇ってくるのは、小さい頃の感覚。 …懐かしいな。 よく、転んで泣く奏多をこうやって宥めたっけ。 なかなか泣き止まない時も、こうして撫でてあげるとすぐに笑ってくれた。 その笑い顔がなんだか可愛いかったな、なんて。 すっかり大きくなった今でもそう思ってしまうのは、きっと奏多の存在が大きくなったから。