掴まれていた手を離されたかと思えば。 すぐに、たくましい腕がわたしを包み込んできた。 ふわりと、奏多の匂い。 「ゆりちゃん大好き」 「…っ」 耳元でそう囁かれ、ふいに全身がぞくぞく。 奏多と抱き合うなんて初めてじゃないはずなのに、今日は異常なくらいに体が反応してしまう。 「…ゆりちゃん」 ふと、至近距離で奏多と目が合う。 真剣な、少し緊張したような瞳。 …もしかして――― そう思った瞬間、体にぐっと力が入った。