「夕梨亜ちゃんおはよーっ!」
「あ、おはよう」
教室に入ってすぐ、友達のエナちゃんが駆け寄って来た。
最近流行りの、ゆるゆるパーマがかかった栗色のショートカット。
女の子らしくて可愛いな、と憧れる反面、腰までまっすぐ伸びる自分の黒髪をいじるつもりはさらさらない。
「あれ?夕梨亜ちゃん、何かいいことあった?なんだかいつもと雰囲気が違う気がする」
「え?あー…」
…きっと、原因は奏多かな。
嬉しくて自然と顔が綻んでしまう。
「―――…うっそ、本当に!!?おめでとう!!
ねーみんな聞いて!!夕梨亜ちゃん、奏多くんと付き合ったんだってー!!!」
「…ちょっ、エナちゃん!!?」
朝の出来事をマナちゃんに話すと、彼女は突然、教室内で大声。
『おおー!よかったな佐伯ー!』
『おめでとうー!!』
『お幸せにー!!』
おかげで、クラス中のみんながわたしに拍手をくれた。
「あ…ありがとう」
…すごく恥ずかしいけど、不思議と悪い気はしないかも。
「えへへ」
満足げにピースをしたエナちゃんは、まるでいたずらっ子のように笑った。