奏多のコートの裾をきゅっと握った。



「ん?どうした?」


「…何でもない」



手は離さないまま、奏多からふいっと目を逸らす。



なんだか急に、奏多が愛しくなった。



そのくせ素直にそう伝えることができない、意地っ張りなわたし。






「心配しなくても大丈夫だよ。俺はずっとゆりちゃんの隣にいるから」



ふとそんな言葉が耳に入り、奏多を見る。



「ね?」



くれるのは、優しい微笑み。



「……うん」



頷いて、少し俯いた。





ねぇ奏多。



その言葉、守ってくれる…?



例え本当にわたしがどこか遠いところに行ってしまっても、…そう言ってくれる…?