「女の顔がよく見えないな。近くで見てみよ」
「え?」
奏多がわたしの手を引いて再び歩き出す。
「ゆりちゃんに手を出しておきながら他に女がいるなんて、そんなの許せるわけないじゃん。確かめに行くんだよ」
「え…でも…」
「声はかけないからさ」
「…えー…」
…あんまり会いたくないんだけどなぁ。
2人は会ったら喧嘩しちゃうし。
せっかくの奏多と過ごせる1日だから、気分を悪くさせたくないのに…
…まぁ、少し気にはなるけど。
結局、握られた手を離すわけにもいかず、しぶしぶ向かいのホームに渡る階段をのぼった。