そして、片手に教材を抱えたまま



私の横を通り過ぎる



そう思ったのに。



「画鋲取るやつ、貸して」



「……え…?」



「三河はこれ押さえといて。


俺が画鋲指すから」



「え、あ、うん…!」


言われるがままに
画鋲取りを差し出したけれど


今、いったい何が起きているのか


いまいちわからなくて



「俺もさぁ、去年図書委員だったんだよ」



「あ、…そう、なんだ」



「そんときも試験前だったっけ


ほんと、これめんどいよな」



小野寺くんの紡ぎ出す言葉が


その場の空気を柔らかく、そして暖める。



そしてようやく気がついた



小野寺くんは、手伝ってくれているんだということに。