腕の中で少しずつ陸斗が落ち着きを取り戻していくのを感じる。その呼吸に合わせて旭は背中をそっとさすった。

「ご飯、食べれそう?」
「…食べる。」
「よしっ!立てる?」
「…立てるけど、肩貸して?」
「うん。いいよ。」

 遠慮がちに体重を預けてくる陸斗の腰にぎゅっと手を回す。すると驚いたような顔を向けられる。

「ん?」
「…ううん。なんでもない。」
「そっか。」

 おそらくこんな風に誰かを頼るってことに慣れていないんだろうなと思う。こんなに小さい子に気を遣わせて、甘えることを許さない環境が怖くて切ない。陸斗の今までの想いを全て汲み取ることはできない。ただ、想像することしか。それでも充分に痛くて、辛い。

「ここにはね、陸斗のとあたしの他に3人住んでるんだよ。」
「3人…も…?」
「大丈夫。怖い人はだーれもいないから。あ、海理!」

 旭の声に反応してゆっくりと海理が振り返る。すると陸斗が身体を少しびくつかせた。