彼が息を飲んだのが分かる。


「…っく…。」


ずびっと鼻をすする音が耳に届く。


「え…?」


少し身体を離すと、彼は…
とても透明で無垢な涙を一筋落とした。















「桜木陸斗(サクラギリクト)…。」

「リクト…?」

「うん…。それが、僕の名前。」

「漢字はどう書くの?」

「大陸の陸に…北斗七星の斗…。」

「そっか。…教えてくれてありがとう。
あたしは春名旭。九をびよーんと延ばして日曜日の日を書いて旭だよ。」

「あさひ…。」

「よろしくね、陸斗。」


涙に濡れた頬にそっと触れる。
そんな彼はもごもごとあたしの名前を数回呟いていた。