返事は…ない。
だからもう一度ノックする。


…でも、返事は返ってこない。


「開けちゃうよー?」

「…だめ。」

「え…?」


重く冷たく、でもはっきりと声がした。


「…っ…出てく。」

「え…。」


開けようとしたはずのドアが自分の方に向かって開く。
出てきた少年の頬はやっぱり桃色だ。


「いつまでもここに…いるわけにいかない…し…。」

「でも顔!まだ熱が…。それにあたし、名前も聞いてない!」

「名前…?」


そう問いかけた身体が少し傾く。
咄嗟に手を出して、その幼い身体を支える。
…ほら、やっぱり熱いじゃない。


「身体、やっぱり熱いよ。
そんなに帰りたいんならお家の人呼ぶから電話番号教えて。
そうじゃなきゃ帰せないし、帰したくないよ。…心配だから。」

「…どうして…そんな…。」

「え、な…なに…?」


あまりにも細い声で上手く聞き取れない。
心なしか身体も声も震えている。


「寒い?寒いならほら…ベッド戻ろ…。」

「…優しくするの…?」


真っすぐにあたしを見て、男の子はそう言った。