ガチャリ、とドアノブを回し、いつもとは少し違う空気を感じながら部屋に入る。
…昨日とは違って呼吸も寝顔も穏やかだ。


あたしは男の子の額に手を置いた。


「…あ、ちょっと下がってる。」


そう、あたしが言葉を発した時だった。


「ん…。」

「え…。」


男の子の目がゆっくりと開く。
…あたしが触ったことで起こしてしまった…らしい。


その開いた目が、徐々に焦点をあたしに合わせていく。
彼の焦点がピタリとあたしに定まったその瞬間、男の子の目はパッと大きく見開かれる。


「…っ…。」


ビクッと顔を背け、あたしの手が額から離される。


「え…?」


ぎゅっと両手で両肩を抱き、身体を縮こませる。
心なしかその細身の体が震えているようにも見える。


「ね…ねぇ…大丈夫?」

「……。」


彼は答えない。
ただただあたしに背を向け、身体を小さくして…震えている。