「うわーごめんなさい!海理…はここで?」


くるりと部屋を見回すと、ソファーの上に無造作に置かれたブランケットが目に入った。


「…ごめんなさい。寒かったでしょ?」

『大丈夫だよ。』


海理が優しく笑う。
…でも、本当はちょっと寒かっただろうな…。
春といえどまだ朝晩は少し冷えるし、こんな薄いブランケットじゃ…。


「…え?」


手を止めてあたしの前に立った海理の手があたしの頬に触れた。


『大丈夫だよ。
…旭は大丈夫?』

「あ、えっともちろん!すごく元気!」

『…良かった。』


にっこりと優しく微笑んで、そのままあたしの頭を撫でる。


「…?」

『風邪ひかなくて
良かった。』


ゆっくりと一文字一文字区切りながら、あたしが読み取れるように話してくれる。


「風邪なんかひかないよ!
あ、あたしあの子の様子見てくるね。すぐ戻ってくるから!
ご飯楽しみー!すごくいい匂い。」


うん、と頷いて海理がキッチンに戻る。
あたしは自分の部屋の前に立ち、一度大きく深呼吸した。


「…よしっ!は、入りまーす。」