旭の部屋に戻り、旭のパジャマの裾を引っ張ってみるものの効果は無い。
なんとなくイメージだけれど、旭は一度眠ったらなかなか起きないタイプだと思う。
目覚ましがいつも3個は鳴っているし。


…仕方ないな。ここで寝かせたら本当に風邪ひいちゃうし。


そう思ってゆっくりと旭を抱きかかえた。
身長はそんなに低い方ではないのに、あまり筋肉のない僕でも持てる程度に軽い。


『…子どもみたいだね、旭。』


唇だけは動くのにそこに音はついてこない。
それでも、今はいい。


自分の部屋に戻ってベッドに旭を下ろす。
布団を掛けてあげるともぞもぞと少しだけベッドの中で動いた。
…どうやら定位置を見つけたらしい。


「んー…ん…ふぅ…。」


寝返りを打つ旭に思わず笑みが零れる。


大切なことを口にする時はとても凜としていて、僕にはない〝強さ〟を感じさせるのに、こうして見る寝顔は子どものようにあどけなくて幼い。


膝を折って眠る旭の髪を軽く撫でる。
少し濡れたままなのが気になるけれど、今更乾かしてはあげられない。
それにこんなに気持ちよさそうに眠られたんじゃ、起こすのはなんだか申し訳ない気になる。


『ごめんね、旭。』


さっきはちゃんと言葉を伝えられなくて。
旭は見ようとしてくれたのに。


…でも、見てほしいというよりも聞いてほしいと思ってしまったんだ、僕は。