「旭が作って行ってくれたんだと思って食べたら味が違くて。」


…どう答えればいいんだろう。彼女は旭と姉妹のはずなのに全然違っていて分からない。


とりあえずポケットからメモを出し、ペンを滑らせた。


『お口に合いませんでしたか?』


そう問い掛けると彼女は少し考えてから首を横に振った。


「旭のより美味しかった。」


淡々とした口調。でも言葉は僕の料理を褒めてくれている。
…どんな顔をすればいいんだろう。…空さんは難しい。


「…旭があなたの料理は美味しいって死ぬほど言ってた意味が分かったわ。」


僕はまたペンを走らせる。


『良かったです。気に入ってもらえたみたいで。』


〝拒絶〟の壁が少しだけ薄くなった気がして、それが嬉しくて思わず頬が緩くなる。


「旭のご飯はあなたが作っていたのよね?」


もちろんここも頷いた。
旭がいつも『美味しい』と満面の笑みでそう言ってくれるのが嬉しくなった僕は料理を進んでやるようにしている。
元々好きだったことだけれど、最近は前よりも好きになっている。


「…それじゃあ、私のご飯だけ旭が作ってたのね。」


本当に小さな声で彼女はそう呟いた。