* * *


「お風呂…あがりました~…。」


ホカホカの身体にパジャマを着て、ロングタオルを首にかけて、あたしは部屋に戻ってきた。


『おかえり。』
―――これは唇で。


『ちゃんと温まった?』
―――これはメモ帳が。


「もちろん!身体の芯まで温まったよ!」

『良かった。』

「あ、着替えありがとう。助かった!」

『いえいえ。』

「…少し、落ち着いた?」


あたしがそう問いかけると、ちょっと雪城さんの表情が曇った。
メモ帳の上をペンが滑る。


『呼吸は少し落ち着いたけど、熱はやっぱり高い気がするな。
身体も細いし、傷も…気になるね。』

「…うん。すごく…心配。」


男の子の言った言葉がふっと思い出される。


〝帰りたくない〟
〝帰る場所なんてない〟
〝それでも帰らなくちゃならない〟


辻褄の合わない言葉たちを、苦しそうに吐き出したあの顔も忘れられない。


「…この子、一人で…何抱えてたのかなぁ…。」


苦しい、悲しい、寂しい…
もっと色んな感情がこの子を取り巻いているみたいに思えて、切ない。