玄関の方に戻ろうとすると、雪城さんが男の子を抱えていた。


「あ、あたしがだっこするよ!雪城さんまで濡れちゃうし。」

『大丈夫。』

「えっとじゃあ、あたしの部屋まで運んでくれる?
その子、今日はそこに寝かせるから。」

『了解。』


あたしは自分の部屋のドアを開けた。
雪城さんが少し足元に気を付けながら、部屋へと足を踏み入れた。
そしてゆっくりとカーペットの上に彼を下ろす。


「え…っとベッドに…。」


ポケットから出たメモ帳に字が刻まれる。


『まだ洋服濡れてるからベッドも濡れちゃうよ。
着替えさせたらちゃんとベッドに寝かせるから、心配しないで。
それに、旭はまずお風呂。』

「え?」

『お風呂沸いてるから、まずは身体温めておいで。
旭も風邪、ひいちゃうよ?』

「そ、それはまずい…っ!仕事休めないしっ…!」

『うん。
だから旭はまずお風呂。
この子は僕に任せて。』

「任せる!お願いっ!」


にっこりと微笑む雪城さんにあたしも笑顔を返して、あたしはお風呂場に直行した。