『前から言おうと思ってたんですが、敬語じゃなくていいですよ。
旭がくだけた話し方をするなら僕もくだけた話し方にします。』

「え…でも…。」


〝でも、はいらない〟
とその笑顔は言っていて、あたしは小さく頷いた。


「タオル、ありがとう!」

『うん。』


そう言ってまたあたしの頭にタオルをかけてわしゃわしゃと拭いてくれる。


「あ、あたしはもういいからっ…あ、タオルもう1枚ちょうだい?」


そう言うと雪城さんはもう1枚持っていたバスタオルをくれた。
フローリングの上に寝かせた男の子の髪を拭く。


髪を拭いて、そのまま頬を見やると、外ではあまり見えなかった傷がこの明るい室内では目を逸らしたくなるほどはっきりと見えた。


「…殴られた痕…って感じ…。打撲が酷い…。」


あまり強く触れると痛がるだろうから、あくまで水滴を拭き取る程度の力加減にしておく。


「あ、あの…この子の着替え、やってもらっても…。」

『いいよ。』

「ありがとう!あ、じゃあもう少し拭いてもらっていい?」

『うん。』

「じゃああたし、着替え持ってくる!
あ!下着、大きめでも何でもいいから適当に貸してくれる?」

『分かった。』

「ありがとう!雪城さんっ!」


あたしは濡れたままの服で自分の部屋に行き、ちょっと小さめのスウェットの上下を箪笥から取り出した。